乳児クラスの男の子が園庭遊びの時に、戦隊ヒーローに変身をしてヒーローになりきっていました。
私の幼少時代はゴレンジャーと仮面ライダーとウルトラマン、そしてキン肉マンなんかも流行っており、よく友達とプロレスごっこやヒーローごっこをしたものです。
ですが、私は保育園でこのようなヒーローに憧れ、なりきって遊んでいる乳児の姿を見るたびに、少し胸が痛くなるのです。
毎週日曜日の朝にTVでヒーローは変身します。
やられても何度でも強い敵に立ち向かって、なんとか敵をやっつけることに成功します。
ところがやられた敵はすぐに巨大化してしまいます。
するとヒーローはいろいろと合体するロボットに乗り込み戦い、最後はすごい必殺技で巨大な敵をやっつけるのです。
かっこいいですよね。大人もついみとれちゃいます。
ただ、TVのヒーローショーは乳幼児には刺激が強すぎないでしょうか。
かっこいい音楽に合わせて、キラキラと変身したり、派手な合体や、すごいCGの必殺技の連続をみれば、子どもなら誰だって憧れてしまい、ヒーローの虜になるのも当然です。
大きくなったらヒーローになりたいなんてことも平気でいいます。親が子に読む絵本やお話をつまらないものに感じるのも時間の問題ですよね。
「子どもが好きで見たがるから」という声もよく聞きます。
それはそうです。
TVショーの作り手は、子どもがガッツリ喜んで、憧れ、ハマり、親に変身グッズやロボットを買ってほしいとおねだりするように、子どもの興味を強烈に引く特殊効果や効果音をふんだんに使って煽っているのですから。つまり好きにさせる努力をしているのです。
それは子どもの成長や教育的観点から物語を作っているのではなく、商業的に考えて空想の物語を作っているのです。
勝てば官軍。勝利こそが正義。
なんて聞こえはいいかもしれませんが、やってることは、「殴って蹴ってやっつける」ですから。
ブロックで遊んでいてもすぐに剣を作りだし、遊びのゴールが戦いごっこに結びつきやすくなる子は、ヒーローが頭の中に強烈に残っており、それが子どもの発想力や創造力にブレーキをかけてしまうのかもしれません。
刺激が強すぎるのでしょう。私は残念に思います。
じゃあどんな物語がいいの?と聞かれれば、私は語り継がれてきた物語をお勧めします。
特に、絵本を用意するのが大人なのであれば(選ぶのは子どもですが)読み手(親)の想いが伝えれる物語が素敵な物語だと思います。
子どもが好きな物語だけではなく、大人が子どもに聞かせたい物語も大切です。物語は親から子に伝わり、そして子どもがその物語を好きになる・・・という自然な形になればいいなと思います。そこには親の思いがありますよね。
物語はストーリーだけではなく、そんな思いも伝えてくれるのですから。
イソップは寓話(ぐうわ)と言われ、道徳的な教訓を伝えるため、動物に例えた短い話です。「うさぎとかめ」「アリとキリギリス」ではまじめにコツコツ頑張れよというメッセージが隠れていますよね。
私はこのような物語に、乳幼児期から触れるといいんじゃないのかと思うのです。
絵本は子どもが最初に触れる芸術でともいわれます。
物語の世界に入りその世界の住人になれるのが子どもです。
見せてはいけない等の規制ではなく、私たち大人が彼らに発信する物語を選ぶことから始めてみませんか?
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